新たに移植前支援決定

心臓移植待機患者への支援

産経新聞 令和4年1月4日配信

明美ちゃん基金 国内で心臓移植待つ子供に財政支援へ 補助人工心臓も寄贈

国内外の心臓病の子供たちを救う「明美ちゃん基金」(産経新聞厚生文化事業団運営)は、来年度から国内で心臓移植を待つ子供たちへの支援を実施することを決めた。具体的には、移植待機患者に必要な小児用補助人工心臓の寄贈▽国内で待機中の子供やその家族への財政支援-を実施する。補助人工心臓は医療機関に計5台を贈り、財政支援は、1世帯当たり年間10万円を無償支給する方針。

基金は平成24年から、国内で心臓移植を受けた子供とその家族に対し、自宅を離れて病院周辺で生活するための滞在費や、臓器提供者(ドナー)から摘出された心臓の搬送費などを無償支援しており、これまで32人の子供に適用してきた。

ただ、国内のドナーは諸外国に比べ極めて少なく、最近は新型コロナウイルスの感染拡大なども影響し、移植までの待機期間の長期化が進んでいる。これにより小児用補助人工心臓が足りなくなったり、子供を看病する家族の負担が大きくなったりしていることなどを踏まえ、基金として新たな支援が必要と判断した。

寄贈する小児用補助人工心臓は、ドイツ・ベルリンハート社の「EXCOR(エクスコア)」。寄贈先は日本小児循環器学会と調整し、最終的に基金の運営委員会で判断する。

財政支援は、日本臓器移植ネットワークに移植希望登録を済ませた患者のうち、医学的緊急度が最も高い「ステータス1」とされた16歳以下の子供が対象。年1回、最大100世帯を限度に希望者を募集し、10万円を支援する。来年度の募集は4月から行う。


新たに移植前支援決定

国内外の心臓病の子供たちを救う「明美ちゃん基金」(産経新聞厚生文化事業団運営)が、来年度から心臓移植を待つ子供たちへの支援を実施することになった。背景にあるのは、伸び悩む臓器提供者数と、それに伴う患者や家族の苦悩。基金の支援は、病に苦しむ子供たちが少しでも明日への希望を見いだせる一助になることを目指している。

■コロナ禍で移植減

改正臓器移植法が平成22年に施行され、家族の承諾による脳死下の臓器提供が可能になるなど提供条件が緩和されて以降、国内の心臓移植は徐々に増加。日本臓器移植ネットワークのデータによると、令和元年には過去最多となる84件の心臓移植が行われ、うち20歳未満の患者への移植は17件あった。

しかし、新型コロナウイルスの出現を機に状況は一変。2年は54件、3年も55件と提供数は大幅に減少した。うち10歳未満の件数も元年の7件に対し、2年が5件、3年は3件にとどまっている。これはコロナ禍によって移植を承諾する家族が病院に行けなかったり、医療現場が逼迫していたりした状況が影響したとみられる。

結果的に、国内の心臓移植の待機患者も増加しており、昨年11月末時点で約930人、このうち10歳未満は約50人いる。

■空きがない状態

病状が進み、全身に血液を送る心機能が衰えた患者は、補助人工心臓を装着して機能を補い、移植を待たなければならない。

しかし、体が小さな子供が国内で使用できる補助人工心臓は、平成27年に保険適用となったドイツ・ベルリンハート社の「EXCOR(エクスコア)」のみ。国内では12施設に約50台が納入されている。ただ、故障に備えたバックアップも必要なため、日本小児循環器学会移植委員会の副委員長で国立成育医療研究センターの進藤考洋医師は「実際に稼働できるのは全国で30台ほど。そのほとんどが空きがない状態だ」と危機感をあらわにする。エクスコアが必要なのに着けられない子供は、いずれ命を落とすことになる。

エクスコアを装着できても、移植までの待機期間は患者の家族に大きな負担としてのしかかる。病院から離れた場所に住んでいる場合は家族が看病のために引っ越しを伴うこともある。実際、経済的負担から移植を断念するケースも存在するという。

■「大きな救いに」

こうした状況を踏まえた基金の支援。国立循環器病研究センター移植医療部長の福嶌教偉(のりひで)医師は「支援は、患者にとって大きな救いになる」と評価する。

もっとも、問題の根本的な解決にはならない。臓器提供が増えなければ患者が助からない状況は続く。求められるのは、移植医療に対する社会の理解の深まりだ。「不幸にも脳死になった患者のご家族に、臓器提供という選択肢があることを伝えられる環境が整備されることを望んでいる」と福嶌医師。さらに「今回の支援を知った方々が、これを契機に家族で、『命とは何か』『死とは何か』といったことを話し合ってもらえればありがたい」と話している。

■「精神、時間…家族の負担重く

心臓移植を待つ子供を支える家族には、負担が重くのしかかっている。

東京女子医大病院(東京都新宿区)に入院する女児は5日、1歳の誕生日を迎えた。生後1カ月を前に心臓病の一種、左室緻密化障害と診断され、当初は地元の病院に入院。しかし、心臓移植が必要と分かり、移植を待つ間、エクスコアを取り付けるため、東京女子医大に転院した。

公務員の母親(32)は3年、同じく公務員の父親(32)も2年の育児休暇を同時に取り、2週間ごとに交代で24時間態勢で女児に付き添う。新型コロナウイルスの感染対策で外出できず、食事は院内のコンビニで買う日々だ。

臓器提供者(ドナー)がいつ現れるかは分からず、少なくともそれまでは入院が続く。父親は「育休の期間内に娘の入院が終わるのか。この先どうするか、考えられていない」と話す。

自宅には、3歳の長女が待つ。家族4人のだんらんは、たまにするテレビ通話。長女は妹を思い、「頑張っているのかな」と話すことがあるという。

千葉県で医療機器の営業をする矢田晶裕さん(28)の次男、凱俐(かいり)くん(2)も左室緻密化障害を患い、同病院に入院している。付き添いは主に妻(27)が担い、月に4、5回、晶裕さんが交代する。

晶裕さんは普段、長男(4)と県内の自宅で生活。朝早く、長男を保育園に送り、仕事へ出かける。日中は営業先を回り、夜は再び保育園へ。家では食事の準備や家事だけでなく、持ち帰り仕事をすることもある。

晶裕さんは「この生活がいつまで続くのか。先が見えない」と漏らす。

移植待機ゆえの精神的な負担もある。

わが子が心臓移植を受けることは、ドナーとなる別の子供の死があることを意味するからだ。「移植を受けることに対する保護者のプレッシャーは大きい」と同病院循環器小児科の石戸美妃子医師。「だからこそ、子供が移植を受けた後、家族はその心臓を大切にしなくてはならないという思いを常に抱いている」と指摘した。
(太田泰、橘川玲奈)

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