産経新聞 東京朝刊 社会面 令和2年9月9日掲載
心臓病の子供を救う「明美ちゃん基金」(産経新聞厚生文化事業団運営)による海外医療支援の一環として来日し、東京女子医大病院(東京都新宿区)で1年間にわたり研修を続けてきたミャンマー人医師、キン・テッ・ター・アウンさん(39)が10日に帰国する。多くの技術を学び実力をつけたキン医師は「多くの子供たちに、しっかりとした診断や治療をしてあげたい」と決意を語った。(小林佳恵)
キン医師は昨年9月下旬に来日し、東京女子医大病院で、カテーテルをはじめとする心臓病治療に関するさまざまな技術を習得。同病院のカテーテル治療の場に多数立ち会って経験を積み、日本で医療行為ができる資格も取得した。実際に60件以上のカテーテル治療に携わり、超音波(エコー)検査も行ったという。
特に治療が難しい複雑な心疾患への理解が進み、カテーテル治療にも習熟したといい、同病院循環器小児科の稲井慶医局長は「一つ一つのことに非常に熱心に取り組み、丁寧な仕事ぶりだ」と評価する。
新型コロナウイルスの感染拡大に不安を感じることもあったが、研修には大きな影響はなかった。キン医師は「東京女子医大病院の医師や、明美ちゃん基金のおかげでたくさんの経験をさせてもらい、感謝している」と笑顔を見せる。
ミャンマーでは国立マンダレー子供病院に所属。同病院には毎年、700人前後の心臓病の子供が新たに訪れるが、治療に習熟した医師はほとんどいないとされる。助からない命も多く、「亡くなっていく子供たちに申し訳ない」という思いを抱えてきた。今の目標は、基金がミャンマー医療支援の活動拠点としてきたヤンゴンの国立ヤンキン子供病院と同じか、それを超えるくらいの患者をマンダレーに集め、カテーテルの診断や治療をできるようにすることだ。
キン医師は「マンダレー子供病院を、さまざまな心疾患の診断や治療ができる施設にしたい」と意気込んでいる。
◇ 協力 東京女子医大病院、国立循環器病研究センター、ジャパンハート ◇